夜の声

以前から、よく散歩をしていましたが、出かけられる 場所が 減ってからは、その機会が増えました。 密集を避け、早足で歩きます。 快適な季節なので、夜の散歩も、気分転換にはぴったり です。 闇(やみ)のなかでは、視覚が弱まる分、聴覚が敏感に なるせい…

映画『羊と鋼(はがね)の森』

雨の週末となりました… 新学期が始まったばかりの皆さんは、緊張感のなか に日々を過ごしているかもしれませんが、一息つき ながら、課題に取り組んでほしいと思います。 最近、音声に関するお話をしました。 その流れから、今日は、映画『羊と鋼の森』(201…

日本語の音声:拍(はく)

昨日に続いて、日本語の音声の基本的な法則について お話しします。 日本語の音声の拍は、「等拍(とうはく)」です。 つまり、1音、1音が、同じ長さで発音されます。 これは、日本語を正しく、かつ、きれいに発音するのに 重要な点です。 しかし、こちらは…

日本語の音声:高さ

先日書いたように、母語の干渉や個々人の癖等がある ため、 音声の指導には、すべての学習者に対応できる たった一つの方法 がありません。 それゆえ、プライベートレッスンのような形態は、 適しているといえますが、個人でも、日本語の音声の 基本的な法則…

音声の授業

皆さんは、日本語学校や大学で、どのくらい音声の 授業を受けたことがありますか? もし、かなりの時間を割き、音声を教えてもらえた のなら、その学校は誠実だといえます。 ありていにお話しすると、日本語教育のなかで、立ち 遅れているのが、「音声」の分…

就職、転職に際して

『日本語空間』は、アカデミックジャパニーズの 論述指導に 、一応特化をしていますが、これまで の縁から、別な依頼を受けることもあります。 論文提出の締め切りが近くなると、その関係の依頼 が多くなるので、別件はお断りすることもありますが、 現在は…

ワンちゃん?

仙厓義梵 せんがいぎぼん(1750-1837)『犬図』 以前に、外国人の学習者と話していて、相手がふしぎな ことをいう ので、首をかしげてしまいました。 2度ほど「ワンちゃん」といったのですが、犬とは関係ない話だった ので… よく聞いてみると「ワンチャン」…

地元愛と方言(2)

大学院で知り合った関西出身の学生が、あるとき「東京弁 では、そういうかもしれないけれど」といいました。 東京弁? 聞きなれないことばでしたが、それは私が、東京のことば を無意識に、標準語と同じように捉えてしまっていたせい かもしれません。 その…

地元愛と方言(1)

「地元(じもと)」といったとき、それは、自身の生活 している 場所、生活圏(せいかつけん)を指しますね。 もし、生まれた場所と、現在まで暮らしている場所が 一致するひとは、地元がどこであるかが、自明のごとく ピッタリしたものなのでしょう。 けれ…

蘭学(らんがく)・写真・カステラ

以前に紹介した映画『合葬』のなかで、主人公の一人・ 悌二郎(ていじろう)は、「長崎帰り(ながさきがえり)」 という設定。 1868年当時、新しい学問を身につけたインテリといえます。 鎖国体制が敷かれた江戸時代にも、長崎は、公的には唯一、 外国へと開…

(仮想)旅へのいざない

地震に、雨、雷と、何だか昨日から暗いので、今日は趣向 を変えたお話をしましょう。 現在は、残念ながら旅行自体が不可能ですが、文章の終わり に、ネット上で、旅の雰囲気だけでも味わってもらえれば と思います。 最近、日本の近代とキリスト教について記…

ゼミ選び(3)

先日、大学や大学院、専門の異なり超え、ゼミの先生 には「人間性」を重視したいと書きました。 しかし、具体的に、それは何を指すのでしょうか? 大学以上を、高等の教育機関と捉えるとき、現実的な 事情はさておいて、導き出されるのは「専門教育」の 使命…

ゼミ選び(2)

昨日に続き、あえて気兼ねせずに、思ったことを書きます。 以前にくらべれば、日本の大学や大学院において、留学生 へのケアやサポートは充実してきたといえます。 しかし、外国の大学の国際性に鑑(かんが)みれば、まだ まだですね。 日本人学生、外国人学…

ゼミ選び(1)

ゼミを選ぶときには、いくつかの観点があります。 まずは、自身の専門、研究テーマが、ゼミの先生と 重なること。 大学卒業以降も、専門性の高い分野での就職や、さらに 研究者としての独り立ちを目指すひとには重要な点です。 特に大学院の場合、専門分野が…

4月の終わりに

例年と打って変わり、混沌(こんとん)としたなか、誰も が手探りのようにして過ごした4月も、今日で終わります。 カレンダーではゴールデンウィークの最中ですが、 大学や大学院に在籍する皆さんは、のんびりした休みと は関係なく、毎日を送っているのでは…

ノブレス・オブリージュ

皆さんは、親の仕事を継ぎたいと思ったことがありますか? 「親の背を見て子は育つ」ということわざがあります。 もし、親と同じ仕事をしたいと自然に思えたなら、すばらしい ことですね。 親御さんは、黙って、その覚悟と責任をも教えてくださった のでしょ…

世襲(せしゅう)

映画『合葬』の冒頭に、主人公のひとり・柾之進 (まさのしん)が、仇討ち(あだうち)に出立 (しゅったつ)する場面があります。 父親が、どこかの武士によって殺害されたため、 その相手を討(う)ちにいくよう、母親から命じ られるのです。 家臣たちは…

職業観

皆さんは、こどものころ、どんな職業に就きたいと 思っていましたか。 幼いころは、憧れが優先しがちですが、成長するに つれ、職業観も現実味を帯びてきますね。 学研が、昨年おこなったアンケート調査によると、 日本の小学生(1年から6年まで)が就きたい…

転換期の人間(2)「モダン」

少し前に、TV番組で、幕末の武士の写真が紹介されました。 なかでも、モダンなたたずまいの武士に、驚きの声が 上がったようです。 彼らは、確かに、150年前というより(服装はともかく)今、 街中(まちなか)を歩いていてもおかしくないような雰囲気 を漂…

写真館のピストル

映画『合葬』の冒頭(ぼうとう)近くのシーンで、 主人公たちは、写真を撮ります。 時は1868年。江戸時代の終わりまでわずか4か月。 すでに1861年、鵜飼玉泉(うかいぎょくせん)が、 江戸に写真館をひらいています。 幕末の江戸には、いくつかの写真館が存…

映画『合葬(がっそう)』

少し前から気になっていた映画『合葬』(2015)を、 huluでみました。 →無料キャンペーン中だったので! 原作は、杉浦日向子(すぎうらひなこ)のコミック。 合葬は「合同の埋葬(まいそう)」の意味。 最近ブログで言及した近世から近代への劇的な時代 の転…

まだ見ぬ皆さんへ…

「日本語空間」でブログを開始してから、明日で1か月 が経ちます。 これまで、一度でも記事に目を通してくださった皆さん、 本当にありがとうございます! 対象は、大学入学準備中の留学生から大学院生までを、 一応設定しています。 そのため、日本語のレ…

転換期の人間(1)「断層」

以前、日本で入学試験問題 ―― 日本人向けの「国語」や 留学生向けの「日本語」―― によく出題される作家に、 寺田寅彦(てらだとらひこ)がいる、と書きました。 寺田にかぎらず、近代の知識人が書いた文章は、読解問題 に取り上げられることがよくあります。…

光のなかへ

朝から夕方まで、あふれる光のなかでうぐいすが 鳴いています。 さながらスポットライトを浴びた歌手のソロ リサイタル といった趣(おもむ)きです。 姿はいっこうに見えませんが、それがかえって イマジネーションをかき立てます。 さて、後ろ倒しになって…

オリエンテーションで

大学院の修士課程に入学したてのとき、先生方が、オリエン テーションで、寸劇(すんげき)のようなやりとりを見せて くださいました。 いわゆる「タコつぼ」型の研究をしている先生 ――あくまでも 「役」です―― が、その研究の欠点に対する指摘を受け、反論 …

ひとりで過ごすということ

大学に入学したとき、学部の先生方が、祝福のことばを 贈ってくださいました。 ひとつとして同じメッセージはありませんでしたが、今も 心に残っているのは、ある先生が語っていたことばです。 皆さんは、大学に在籍する4年間に三つの自立を果たして くださ…

リモートワーク

いまだかつてない事態に、日本の社会でも少数派だった リモートワークが試みられることとなりました。 しかし先日のニュースによると、リモートワークを初めて 導入 した会社の社員が「個人での作業がつらい」といって いるそうです。 それが、物理的な不便…

武士とクリスチャン

グイド・フルベッキと佐賀藩士 日米修好通商条約(にちべいしゅうこうつうしょうじょう やく)により、鎖国(さこく)体制を経た日本の「開港」 が取り決められました。 対象は、神奈川、長崎、新潟、兵庫、大阪、江戸の港。 日本の「近代」が明けるまで、10…

教会への道

ここ港町では、近代の息吹(いぶ)きを感じさせる 建造物が、そこかしこに見受けられます。 なかでも臨海地域には、種々(しゅじゅ)のキリスト 教会が散在しています。 壮麗(そうれい)な大教会は、すばらしい! としか いいようがありません。 しかし私は…

「嫌われ者」とか

少し前のこと。 スーパーの駐車場で、傷ついて動きが鈍くなった 鳩を、カラスがものすごい勢いで襲っているのを 見かけました。 鳩が哀れだと感じた私は、思わずカラスを追い 払っていました。 後になって、カラスは、私たちが食肉を調達する ようにしていた…