地元愛と方言(2)

大学院で知り合った関西出身の学生が、あるとき「東京弁

では、そういうかもしれないけれど」といいました。

東京弁? 

聞きなれないことばでしたが、それは私が、東京のことば
を無意識に、標準語と同じように捉えてしまっていたせい
かもしれません。
 

その知人は、卒業したら地元で就職することに決めている

と、きっぱり意思表示をしていました。

彼女は、家庭のなかでは地元のことばを使いながら、外では

標準語も使えるよう、親からしつけられたとのことでした。

 

固有な表現が残っている土地では、ことばと地元愛が一体

のように思えます。

 

昨年、『翔(と)んで埼玉』という映画が話題になりました。

「埼玉県人にはその辺の草でも食わせておけ!」などという
過激なセリフとともに、埼玉を、いわゆるディスる要素が
満載の内容。※1)
 
しかし、当の埼玉県では、関心を持たれたということで、
かえって全面的に歓迎ムードだったようです。
 

この映画をみた元留学生(埼玉県に居住経験あり)から、

おもしろかった! という感想を聞き、私もDVDで

『翔んで埼玉』を鑑賞しました。

まあ、関東に住んでいれば、わかりすぎるくらいわかる

ニッチなネタばかりで、おもしろくないことはないけれど、

気恥ずかしさもあるといったところ。

 

同時に、他の地域のひとがみたら、関東人だけの「内輪受け

(うちわうけ)」でおもしろくない、と批判されるのでは

ないか? とも考えてしまいました。

 

日本に限らず、「格付け(かくづけ)」ということが、

しばしばおこなわれます。

 あまり露骨(ろこつ)なのは、悪趣味かもしれませんが、
遊び心で自虐の ポーズを取ったりしながら、地元や出身地を
格付けする行為は、少なくとも当人たちにとっては楽しそう
です。
 

関東は、大枠(おおわく)で標準語の地域にあたっている

ので、ことばで差がつけにくい分、別なこまかい要素で、

地元や出身地を差異化したい のかもしれませんね。

 

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    映画『翔んで埼玉』より

 

 ※1)実際には、埼玉県が一方的に貶(おとし)
 められるわけでなく、東京及び他県の腹黒
(はらぐろ)い企(たくら)みやセコさが、
 余すところなく? 描かれています。
 やれやれ…