静謐(せいひつ)な時間
論文の完成まで、あと一息というところで、簡単に
仕上げたくない気持ちに引かれ、踏みとどまって
います。
懐疑すること。
限定的に答えが決まっていないからこそ、「わかった
つもりにならず」、何度でも問いを繰り返すこと。
事務所から家に戻る時間が惜しくて、リーズナブル
なホテルに宿泊しました。
深夜、ラウンジへ行くと幸いだれもおらず、ひとりで、
プリントアウトした原稿に目を通すことができました。
PCの画面上では、完全な推敲はおこなえません。
直せたと思っても、プリントアウトしたものからは、
必ず訂正箇所が見つかります。
自身をわざと追い込みながら、より高みを目指す!
赤字の散らばった原稿――
静謐な時間が流れていきます。
ドイツのヴェストファーレンにある「星空の寝室」
『可笑(おか)しなホテル―世界のとっておきホテル24軒―』
二見書房(2011)より